良質なミステリ短編に巡り会いたい〜食べるように読む、呑むように読む～

ジャック・リッチー

をご存じでしょうか。

アメリカの

ミステリ短編の名手。

クライム・マシン （河出文庫） [ ジャック・リッチー ]

出会いは7年前。

第一印象から、こうなる予感はしてた。

気質はせっかち、

走るなら短距離走、

読むなら短編な私が

ジャックと相性が悪いはずもない。

ホント、絶品！

シンプルで

ムダのない味つけ。

なのにあとひくうまさ！

以来ことあるごとに

ひっぱり出しては

もりもり読んでおります。

ジャック・リッチーのあの手この手 （Hayakawa　pocket　mystery　books） [ ジャック・リッチー ]

ジャック・リッチーのびっくりパレード （Hayakawa　pocket　mystery　books） [ ジャック・リッチー ]

”ターンバックル刑事”シリーズ

なんてもはやコント。

探偵が出てくる
　　↓
依頼を受ける
　　↓
調査を開始する

これが一般的な流れよね。

このシリーズも

もちろんそうやって進んでいく。

しかしですね、

「犯人は…！」と

山場へさしかかった瞬間、

読者はとんでもない肩すかしを

くらうことになっちゃうんだからさあ大変！

なんと

探偵が思いっきり

推理をハズすの。（毎回ね）

で、

仲間や容疑者たちが

あれよあれよという間に

犯人を暴いちゃう。（毎回ね）

斬新すぎるぜ、まったく！

みんなが各々の

冴え渡る推理を展開していく間、

探偵が何をしてるかっていうと

「憶測です、

　憶測にすぎません」

とか

「ばかな」

とか間の抜けた合いの手を

入れるだけなのね。

それは

容疑者が

よく使うセリフだろ！

しまいには完全に置いてけぼりをくらって

負け惜しみの捨てゼリフ。

1970年代の作品とは

思えないフレッシュさ。

まさに痛快の極み！

美味しいフルコースを

いただいたときみたいな

満腹気分で読み終えられます♪

ちなみにジャック、

現実的なものしか書かない人

だと思ってたら、意外や意外。

吸血鬼を主人公にした作品も

残していました。

カーデュラ探偵社 （河出文庫） [ ジャック・リッチー ]

しかも元伯爵で探偵。

吸血鬼につきものの、

”はっとするような美女”が

たびたび出てきます（笑）

ただね…

この人350もの作品を残しているのに

なぜか日本で出版されたのは

たったの6冊。

あたしゃくやしい！

情けない！

あ〜どなたか親切なお方が

編集してくれないものか…！

■□■□■□■

あ。

ジャック・リッチーが

お気に召した人なら、

ヘンリー・スレッサーの

『うまい犯罪、
　しゃれた殺人』

もオススメ。

うまい犯罪、しゃれた殺人 ヒッチコックのお気に入り （ハヤカワ・ミステリ文庫） [ ヘンリ・スレッサー ]

スレッサーは創刊時代から寄稿していた

”アルフレッド・　

　　ヒッチコック・マガジン”の立役者。

彼の作品はテレビ番組

『ヒッチコック劇場』*1に

何度も登場しているらしく、

この短編集はそこからの

選りすぐりの作品が

ギュッと詰まっているんです。

なんせ副題が

”ヒッチコックのお気に入り”。

巨匠のお墨付とあれば

読まないわけにはいかないでしょう！

こちらもムダのない、

あっさりさっぱりした文章。

ぐいぐい呑めちゃう

甘いカクテルの、

ような。

さらりとした梅酒の、

ような。

（↑言いたいだけ）

登場人物たちの

軽妙なやりとり。

あっと驚く展開。

早く読みたい、

だけど

読み終わりたくない。

そんなもどかしい気持ちで、

私はちびりちびりと

お酒を呑むように楽しみました。

（下戸だけどね！）

読んでしまうともう

さびしくてさびしくて。

あ、これもいいよ。

最期の言葉 （ダーク・ファンタジー・コレクション） [ ヘンリ・スレッサー ]

あ〜！

どっかに

いい短編作家

いないかな！

*1:

ヒッチコック劇場 第一集 バリューパック [ ジョセフ・コットン ]

ヒッチコック劇場 第ニ集 バリューパック [ バーバラ・ベル・ゲデス ]

ヒッチコック劇場 第三集 バリューパック [ ラルフ・ミーカー ]

ヒッチコック劇場 第四集 バリューパック [ ヴィンセント・プライス ]