「ああ、申し遅れた。
松平残九郎家正だ」
「松平と言うと…」
「なに、名前は派手だが
三十俵三人扶持のただの貧乏御家人さ」
『御家人斬九郎』
1995
持っていたのである。
※冒頭ナレーションより
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原作は
眠狂四郎シリーズで
おなじみの柴田錬三郎。
私はね、時代劇だと
戦国時代が好きで
江戸時代(特に幕末)は
ちと苦手なんですよ。
でもこれは別!
”斬九郎”こと
松平残九郎家正(渡辺)は
「それがし”十八松平”の一つ、
大給松平」
と言っているように
東照大権現様、
つまり
徳川家康に連なる
華麗なるお血筋、
松平家の末裔です。
酒好きの放蕩息子で通っているけれど
剣術は超一流。
その腕を見込まれていろんな所から
お呼びがかかるわけです。
「残九の旦那は男四人、
女五人の九人兄弟の九番目で、ええ。
それで残九郎とおっしゃるんですねぇ。
長男と次男は剣術の稽古の相手をしていて、
打ち所が悪かったのか
親父さんの木刀で死んだそうで。
残ったたった一人の兄さんは他家へ養子に入り、
姉さん達も大奥へ上がったり嫁いだり、ええ。
ところがその、皆さんどうもその、
おふくろ様を苦手らしく、ええ。
誰ひとり寄り付かないらしく。
ま、そんなおふくろ様の面倒を
押しつけられてると
残九の旦那はおっしゃいますがね」
※下っ引き新六の証言より
九郎*1があくせく働くのは
誇り高き母 麻佐女様(岸田)のため。
このおふくろ様、
鼓の名手であり
薙刀の達人でもある
鬼婆…
じゃなかった、烈女。
「母は来る日も来る日も
ろくな物も食せず痩せ衰えて、
親不孝な倅を持ったとて
涙に暮れておりました」
なんて弱々しいことを言ってるけど、
それもこれも
母上が
とんでもなく
食道楽なせい。
「俺がどれくらい苦労して
あのババァの飯代稼いでんのか
知ってんのか!
並の食い扶持じゃねぇんだぞ!」
なんてグチが出るくらいのお方なんです。
息子が苦労して稼いだ金を巻き上げると
高級うなぎ料理やら
高級卓袱料理やらに変えて
ぺろりとたいらげちゃう。
さらわれて人質になった時でさえ
飢え死にするとゴネて
ご馳走を出させる始末(笑)
だから九郎は
すぐにまた馬車馬のように
働かされることになるのであった。
▼つまりこういうことです
貧 乏 → おふくろ様不機嫌
↑ ↓
ご馳走←報 酬←かたてわざ
「冗談じゃありませんよ!
したい放題、食いたい放題!」
と九郎がブチ切れても
まったく意に介さない麻佐女様。
けっきょくおふくろ様には
頭が上がらない九郎なのでした。
でも二人のやりとりが
このドラマを
よりいっそう
味のあるものに
してるのよね。
第2シーズン9話目”駆け込み”で
母上が依頼人の身の上を
講談仕立てで説明して
九郎が「松平!」って
呼びかけるシーンが特に好き。
ほんっっと
いいコンビ(笑)
【今日の脇役】
武家の娘で腕も立つ踊りの名手、
粋でいなせな辰巳芸者の
蔦吉(若村)。
九郎とくっつきそうで
くっつかない微妙な関係。
互いに想い合っては
いるんですけれどね。
そこがまたいい!
お座敷での踊りの艶っぽさも
見どころの一つ。
真面目だが融通の利く幼馴染、
愛妻家であり恐妻家、
甘いもの大好きな
”雷おこし”こと
与力の伝三郎(益岡)。
いかつい顔して
けっこうおちゃめ、
情報収集役や伝書鳩役として
みんなに重宝がられている
”南無八幡”こと
岡っ引きの佐次(塩見)。
九郎の旦那は、
こんな愉快な仲間たちと
協力し合って
人助けしたり
世直ししたり
しているんでございますよ。
あ、ちなみに
愉快な仲間たちでさえ
おふくろ様にはタジタジです(笑)
やっぱ最強だな…麻佐女様は!!!
クスッと笑えて
ビシッと締める。
緩急のつけかたが絶妙!
しかしねぇ…
これほど優れた作品で、
しかもシーズン5まで
出ているのにもかかわらず
DVD発売されておらぬとは
いったい何事か!
まことに遺憾なり!!!
出演者が多いから
著作権の問題があるのでは…
って話だけど、
そんな野暮なこと言っちゃ困りますよ!
てなわけでみなさん、
再放送をみつけた折には
是が非でも
観ていただきたい。
伏して御願い奉りまする!
*1:母上がこう呼ぶんだけどなんか響きがかわいいのよね。残九郎の呼称は”斬九郎” ”残さん” ”残九の旦那” ”残様”など多岐に渡るが、私はこれがお気に入り。九郎~!