「あのすいません、あたしを、
あたしを弟子にしてください!」
『タンポポ』
山崎努, 宮本信子, 安岡力也, 役所広司, 大滝秀治,
渡辺謙, 黒田福美, 桜金造,津川雅彦
おいしいラーメン屋を
目指して奮闘する
子持ち未亡人と
トラック運転手のお話。
軸になるのはあくまで
ラーメン店のストーリー。
その後輩のガン(渡辺謙)、
土建屋のピスケン(安岡力也)、
食通のホームレス先生(加藤嘉)、
スポンサーの老人(大滝秀治)、
老人の家の料理人ショーヘイ(桜金造)。
究極の店づくりに
取り組む
このメンバーを
描くかたわらで、
ラーメンの蘊蓄を語る名人*3、
グルメな白服ギャングとその情婦、
マナー教室の先生と生徒たち、
食通の鞄持ちと重役たち、
母が危篤の一家、
食品をつついて回る奇怪な老婆と店長、
食い意地の張った詐欺師と刑事などなど
食にまつわる
いろんな人間模様を
コラージュのように
映画の中に
ちりばめているのです。
この試みがおもしろい。
ちょっとずついろんな味を
つまみ食いしながら楽しめるの。
ホームレスたちが
先生を送り出すために
実際に歌っているのは合唱団の人たち。
嘘くさくならないように
同時録音をする熱の入れよう。
観終わったら
おいしいものを
食べに行きたくなるよ!
「母ちゃん、今日こそはやるからね。
みんなが母ちゃんのラーメン食べて、
最後にこうやって丼のスープ飲み干したら、
母ちゃんの勝ちなんだ」
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▼ラーメンが50倍おいしく感じられます。
【おまけ】
メイキングも観ました。
いやぁ、すごいよ、
エッセイを読んだときから
わかってはいたけど
独自の美学を
持っている人で
完璧主義者なのよね。
作中の”ナルトを投げるシーン”
一つ取っても、
かなりの撮り直しをしてた。
いっさいの妥協を許さない人なんだな。
エッセイだと
皮肉屋で気どり屋(笑)だけど、
家族にあてて書いた手紙*6や
奥さんが語る旅のエピソード*7から
意外と寂しがりやでかわいらしい人
だったのがわかる。
もっといろんな作品を
作ってほしかったな…
【気になったセリフ】
ゴロー
「おい兄さん、ケンカ売るならどうだろ、
俺に直接売ってくれねぇか」
グルメのカバン持ち
「そうねぇ…今日はどういうものか
朝からコルトン・シャルルマーニュが
飲みたいような気がしてたんだけど。
81年はあるかしら?」
ゴロー
「熱くないラーメンは
ラーメンではない!」
【今日の知ってる人!】
この映画で
印象深いシーンとして
よく挙げられるのが
ホームレスのおじさんが
オムライスを作るシーン。
このホームレスのおじさんは
高見映さん。
『できるかな』で
をやってた人です。
小柄なホームレスを演じてた
辻村真人さんは
『忍たま乱太郎』で
学園長をやってました。
OP曲の”勇気100%”は光GENJIだったね(笑)
食い意地の張った詐欺師は
小津安二郎の映画で
常連の脇役だった
中村伸郎。
そしてマナー教室の先生も
小津監督にかわいがられた
▼もっと伊丹十三!な方は…
▼買ったもの載せてます!
*1:▼伊丹監督作品『お葬式』もぜひ!
*2:この映画のために大型免許を取得した。
*3:演じる大友柳太朗はこの作品の撮影が終わった翌日に投身自殺。『タンポポ』が彼の遺作になった。
*4:父伊丹万作の『戦国奇譚 気まぐれ冠者』から拝借したとのこと。
*5:映画監督であり俳優でありエッセイストでありデザイナー。多才な知識人で、エッセイではたびたび蘊蓄を披露している。制作する映画がしだいに娯楽作品としてでなく社会に問題提起する作品に変わっていったことで、時に騒動に発展することもあった。そして1997年、謎の死を遂げる。さまざまな憶測が飛び交うものの、真相は未だ明らかにされていない。
父は監督伊丹万作。本名は義弘だけど、万作は岳彦と名付けたかったので、家ではタケチャンと呼ばれていた十三(笑)女優の宮本信子は二度目の妻。妹ゆかりはノーベル賞作家大江健三郎の妻。十三の息子は二人おり、長男はドラマ『金田一少年の事件簿』で警視明智健悟を演じた俳優池内万作。その弟の万平は『タンポポ』でタンポポの息子を演じてました。
*6:新婚時代、伊丹監督がやらかして(たぶん浮気)しまったときの奥さんへの手紙は読んでほしい。原稿用紙にカタカナで書いてあるの。
▼これに載ってます。
*7:伊集院光のラジオ番組で披露してました。撮影の裏話もあって、なかなか興味深かった。
*8:日本橋にある老舗洋食レストラン。東京まで足を運ぶことのない地方の人間にとってはその味よりも真っ黒に日焼けした店主の方がおなじみであろう。なにはともあれたいめいけんはこの映画にちなんで”タンポポオムライス”をメニューに載せるようになったのでありました。ちなみに私はチキンライスが苦手なのでオムライスもダメでござる。
rurubu.jp
*9:最終回まで無言で通した工作の神様。ノッポさ~ん!
*10:岡田親子の芸名は文豪谷崎潤一郎先生が考えたんですとさ!すごいな、おい!
*11:小津映画、一時期ハマりました。極妻と言ったらこの方、岩下志麻姐さんが主役。ムーミンの声でおなじみの岸田今日子様、きいっちゃんことミキプルーンこと中井貴一の父佐田啓二、黄門様こと初代水戸光圀をやった東野英治郎も出ております。