『シカゴ・
ブルース』
"The Fabulous Clipjoint"
1947/フレドリック・ブラウン
父の死の謎を
追いかける
少年のお話。
父と継母と
その連れ子である義妹と
4人で暮らす、
18歳の少年エド。
複雑な家庭ではあるし、
両親ともに
酒に依存しがちではあったが、
大きな波風もなくやってきた。
そんなある日、
路地裏で
父の遺体が発見された…
なぜ死んだのか?
誰が殺したのか?
事件ばかりか、
思えば父のことをろくに知らず、
知ろうともしなかった自分に気づく。
いてもたってもいられず、
エドは10年ぶりに
伯父のアンブローズに
会いに行く。
そして彼とともに
シカゴに戻り、
犯人捜しを始める…
■□■□■□■
私は
走るなら
短距離派、
読むなら
短編派の人間だ。
なんせ、あきっぽい。
長く続けることが
とにかく苦手なのだ。
だから長編小説は
極力手を出さないんだけど、
実はこの本、
手違いで取り寄せたのよね。
しばらく放置してたが、
しかたがないから
読んでみたわけです。
びっくり。
サクサク読めちゃった。
もともと
短編集を2冊持ってるから
作風は知ってるつもりでいたけど、
『まっ白な嘘』
『不吉なことは何も』
これとは全然ちがったんです。
真相を探る間に、
伯父から
ぽつりぽつりと聞かされる
父との思い出話。
若くて向こう見ずで、
何事にも
全力でぶつかっていた父…
ちっとも
平凡な人生なんかじゃなかった。
エドは
世の中の深さをちょっと知り、
大人の世界での立ち回り方や
生きる度胸を身につけていく。
少年が
ほろ苦い経験を経て
大人になっていく物語は
よくあるけど、
作者である
フレドリック・ブラウン自身も
両親を亡くし、
おじに引き取られている。
つまりエドは
ブラウンそのものなのだ。
だからこそ単なる創作の域を出て、
こうも生き生きと
描かれているのだろう。
映画を一本、
観終えたような
満足感。
エドの物語はその後まだ
細切れに発表されていて、
こないだ読んだのがこれ。
『死の10パーセント』
フルコースに見立てた
短編が13編構成されてて、
そのうちの2作品に
エドのシリーズが
収録されています。
どちらも
メインディッシュとして
配してあったので
読みごたえあり。
せっかくですので
あたたかいうちに
お召し上がり
くださいませ。
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