「明智君。
私は奥の手をいよいよ出す時だと思ってる」
「心理試験ですか」
『D坂の
殺人事件』
1998/実相寺昭雄
此れは
昭和弐年(1927)、
金融恐慌の頃。
東京の町で起きた
或る殺人事件の
お話で御座います。
蕗屋(真田広之)という贋作師の元に
古書店の女店主が訪ねてくる。
それは好事家の間で名高い
幻の責め絵師大江春泥の
贋作の依頼で…
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原作は
江戸川乱歩の小説。
『D坂の殺人事件』そのものに
『心理試験』を掛け合わせ、
乱歩の世界観を用いて
登場人物やストーリーを
ふんだんに肉付けしています。
活字を効果的に出したり、
ペーパークラフトで町並みを再現して
要所要所に挟み込んだり、
ニクい演出が光ってる。
新聞の見出しも
こんな風にいい味出してて
レトロ好きには
たまらんのではないかな。*1
白晝堂々の
兇行
犯人の手懸掴めず
さて。
我らが
開始20分過ぎて
ようやく登場。
しかも部屋に引きこもって
古本の山に埋もれた汚い姿で
怒鳴りつけられるという
拍子抜けの第一印象…
こちらが驚いている間に
またすぐに引っ込んで
30分も現れぬかと思うと、
その後 何が起きたか
明智先生は
きちんとした身なりで
事務所を構えた
私立探偵としての体裁を整え
わたくしたちの前に
再登場したのでありました。
なんなのー!?
旧知の間柄をうかがわせる
笠森判事(岸部一徳) や、
明智の助手である
出てきますが、
捜査らしい捜査はないまま
物語は進んでゆきます。
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実相寺監督が
独自の世界観で
クオリティーの高いものに
仕上げているものの、
一つ難をつけるなら
性描写。
私はそういう場面も
格調高く描いてくれるものと
思っていたんだけど、
はっきり言って卑猥すぎる。
AVみたいで正直がっかりしました。
でもこの容赦ない性描写こそが
実相寺監督の持ち味なのだそう。
ちぇーっ。
ま、よく考えてみれば
”濡れ場”が不可欠ってことは、
一般の女優は出演承諾しないよな…
となると裸体OKな女優に
お呼びがかかるわけですね。
となるとビジュアル的には
期待できないわけで…
私はね、
性描写には
品性があってほしい。
抒情性がほしいわけですよ。
美しくなけりゃ
いやなのよー!!
(↑心の叫び)
というわけで
耽美さを重視する方には
おすすめいたしません。
清濁併せ吞むことのできるお方だけが
愉しめる作品となっております。
あ、その代わり
この映画に出てくる
女優を全員合わせても
くらべものに
ならないくらい
真田広之が
美しいです。
いちばん整っているのも
いちばん色気があるのも
広之です。
エロティシズムと
ナルシシズムの融合に
めまいがいたしました。
広之のためだけに観る。
そういう選択肢もあると
オレは思うぜ、みんな。
▼真田の色気はここで堪能してくれ!以上!zuzz.hatenablog.com
長々と申しましたが、
いろんな意味で
乱歩愛を試される作品。
気になった方はぜひ!
あと絶対に
一人で観てくれよな!*3
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江戸川乱歩作品が
好きである、
ということを
公言するのは
いささか
躊躇してしまう。
それは
乱歩の作風が
と呼ばれるせいである。
持論で大変恐縮だが
かねてから思っていたことなので
よい機会だから書いておく。
思春期までに
江戸川乱歩に出会うと、
ほぼ確実に
人格形成に影響を及ぼす。
かく言う私も中学時代に
『江戸川乱歩傑作選』
を手に取りました。
『二銭銅貨』『二癈人』
『D坂の殺人事件』『心理試験』
『赤い部屋』『屋根裏の散歩者』
『人間椅子』『鏡地獄』『芋虫』
という乱歩のエッセンスを
ギュッと凝縮した一冊を
いっきに飲み込んでしまった。
あの猟奇性、
とんでもない衝撃でしたね。
ミステリ界の異端児
乱歩の描く異常性。
ありゃ猛毒だ。
子どもの読むもんじゃない。
しかし気づいた時には
もう遅かったのでした。
わたくしもすっかり乱歩中毒。
もう手当たり次第に
作品を貪り読んでしまいましたとさ。
おそろしい子!
By『ガラスの仮面』
【おまけ】
監督は実相寺昭雄。
『姑獲鳥の夏』
を前に紹介しましたね。
▼これはおもしろかった。
実は同じく実相寺監督の
メガホンによる乱歩映画
『屋根裏の散歩者』
もございます。
『D坂の殺人事件』よりもさらに前、
1994年の作品です。
三上博史が主演で、
でもこっちは
D坂の比ではない卑猥さ。
完全にAVになってしまっている*5ので
おすすめしません…
こんなのもあるよ
▼買ったもの載せてます!