「小さい頃、
公園に白鳥がいたのを覚えてる?」
「覚えてるわ」
「ママの髪みたいな色してたわね。
今の私の髪もママくらい白いかしら?」
『八月の鯨』
"The Whales of August"
1987/リンゼイ・アンダーソン
海沿いの家で暮らす
老姉妹のお話です。
目の不自由な姉リビー。
彼女を世話する妹サラ。
へそ曲がりで気難しいリビーは
いつもネガティヴなことしか言わない。
このごろは特に
死について口にするようになり、
サラは心配している。
50年来のつきあいの友人ティシャは
サラの懐事情や世話のしんどさを心配し、
金持ちの娘がいるのだから
リビーを預けるのが筋だと助言する。
しかし二人の不仲を知るサラは
そんなことはできない、と
首を振るのだった…
⚘ ⚘ ⚘ ⚘ ⚘
前回はおじいちゃんの
お話だったけれど…
今回はおばあちゃんたち。
▼前回のおさらい
尽きることのない
潮騒と風。
さびしい島での暮らしを彩るのは、
近所の人々からの
親切な気遣いや
うれしい誉め言葉。
そして
たくさんの花に、
お茶と冗談とゴシップ。
長く生きる
ということは、
その分だけ
思い出や経験が
増えていくということ。
しわしわの手。
動作もゆっくり。
だけど長い長い髪を結ったり、
お茶の用意をしたりの
手際の良さが、
もう何十年とその動作を
繰り返してきたことを思わせて
グッときた。
それでね、
不愛想なリビーも、
おちゃめなサラも、
ともに最愛の人を
亡くしているんです。
サラの宝箱の中には
リボンで束ねた夫からの手紙。
リビーの宝箱の中には
夫の遺髪。
それに触れている間は
二人とも
夫の生きた証を感じていられる。
この場面がせつないんだよね…
昔も今も大切にすることができるなら、
老いてゆくことも
こわくないかもしれないなって思った。
”娘時代に見た鯨がまた見たい”。
そんな
おばあちゃんの
ささやかな願いが
いとおしい映画です。
【今日の知ってる人】
気難しやのリビーを演じたのは、
名作『イヴの総て』で
主人公マーゴだった
大御所女優です!
▼ポワロ作品にも出てるよ!
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